脳以外で生成されたアミロイドβもアルツハイマー病を引き起こしうるとの研究結果
2017年11月のニュースなんだけども、なかなか興味深いからメモっておこう。
アルツハイマー病は脳だけに起因する病気ではない
アルツハイマー病というと、今まで脳内に原因があると捉えられていたわけだけど、ここにきて「全身に目を向ける必要がある」という新しい見解が示めされた。
「アルツハイマー病は脳だけに起因する病気ではない」、研究結果が明らかに | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
根本的な治療法はまだ見つかっていない病気だけど、この研究のおかげで糸口が見つかってゆくかもしれない。
上記ニュースの元になった研究はこちら↓
『血液由来アミロイド-βタンパク質はアルツハイマー病の病態を誘発する』
Blood-derived amyloid-β protein induces Alzheimer’s disease pathologies | Molecular Psychiatry
ざっくりと研究内容と結果
超ざっくりまとめておく。
方法
「アルツハイマー病にかかっていない正常なマウス」と、「アルツハイマー病に罹患しているマウス」とを外科的に結合し、循環系を1年間共有させた。
結果
1年後。正常なマウスの脳から、アルツハイマー病の病態が検出された。
さらに、海馬CA1における「長期増強」が顕著に損なわれたことが分かった。
この海馬での「長期増強」という現象は、学習や記憶の仕組みに関与していると考えられている。
だから、この作用が損なわれるということは記憶の形成が障害されることを示唆していると思う。
考察
研究者らは以下のように考察している。
血液を1年間共有したところ、アルツハイマー病のマウスから正常なマウスの脳にアミロイドβが輸送され、蓄積し、アルツハイマー病の病態を誘発した。
「アミロイドβ」は、脳組織だけでなく、血小板や血管、筋肉でも生成され、他の器官にもみられる
「アルツハイマー病は脳だけに起因する病気ではない」、研究結果が明らかに | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイトより
脳由来のアミロイドβだけじゃなく、血液によって全身から運ばれてくるアミロイドβも脳の機能に損傷を与えうるってことが確認された訳か。なんかちょっと衝撃。
脳と末梢、両方からの治療へ新たな糸口
研究者らはこう述べている。
「私たちの研究は、アルツハイマー病の病因に対する新規な洞察を提供し、脳および末梢の両方でアミロイドβ代謝を標的とすることによって、アルツハイマー病の治療法の開発を支援する証拠を提供する」
今までは脳を対象とした治療法のみだった訳だけど、今後はこれ以外にも新たな治療法が確立されるかもしれないね。予防のあり方もちょっと変わってきそうだな。今後も注目していこう。
その逆もまたあり
一方で、こんな研究もあった。
『若い血は、マウスの認知機能およびシナプス可塑性における加齢に関連する障害を逆転させる』
この研究では、老化したマウスを若い血液に曝露すると、シナプス可塑性を活性化させ、認知機能を改善できることを示している。
2つの研究はとても対照的だ。
血液を共有することによって、一方はアルツハイマー病が誘発され、一方は認知機能が改善された。
たとえ脳の問題であっても、全身の健康状態も無関係じゃないってことがよく分かる。体内年齢は若くありたいものだ。
2つの研究を見て思うこと
将来的に人類がどこまで老化に抗うかってのは置いておいて、やっぱり脳の病気とはいえ、全身の健康状態がすごく大事なんだなって思った。
生活習慣やどんなものを口にするかで、血液の状態も変わってくるわけだし、食養生ってのは侮れないな。
適度な運動と睡眠と食養生。40代になったらもう一度見直したい。
なんで40代かっていうと、アミロイドβの蓄積は意外に早くから始まっていることが分かっているから。
(アミロイドβは認知症が発症する25年くらい前から蓄積が始まっていることが分かっている。例えば70歳で発症したとすると、45歳くらいから蓄積が始まっていたことになる)
しかし、年代に関係なく、健康習慣はいつでも大事なのは間違いない!