ジキルとハイドなアミロイドβ前駆体
さて、先回は我らが安部田の誕生を探求した。
今回は、安部田の元、安部田前駆体について探求してみたい。
※安部田が何のことか分からない場合はこちらを見るべし。
日本蛋白質構造データバンク (PDBj) によると、『ジキルとハイドのように、一見無害なものが有害なものに変わってしまう、そんなタンパク質がある*1』という。
「安部田の元(APP)」はその重要な事例の一つだそうだ!
「安部田の元(APP)」のジキルとハイドっぷりを探求してみようじゃないか!
安部田の元(APP)
「安部田の元」、すなわち「安部田前駆体」の正式名称は、「アミロイドβ前駆体タンパク質(amyloid-beta precursor protein)」である。略して「APP」と表記されたりする。
「安部田前駆体」と呼んでもいいのだが、もういっそのこと「安部田の元」でいいような気がする。 以降、「安部田の元(APP)」という愛称で話を進めていこう。
尚、ここでの「安部田」はアミロイドβの愛称であり、地名や名字等とは一切関係がないことをご留意いただきたい。
「安部田の元」の全貌
「安部田の元」は多くの機能を持っており、非常に重要で複雑極まりないタンパク質らしい。
すんごい研究されているのにも関わらず、まだまだ解明されていない部分が多くあるのだ。
そんな謎に包まれまくりの「安部田の元」なのだが、とりあえずお姿を拝見してみよう。
「ほほぅ、なるほどな~( ̄- ̄)」
って、私にはよく分からんので、ちょっと書き込んでお勉強してみたりする。
機能面
「安部田の元(APP)」は全体でも機能するけど、領域ごとに切り離されてもそれぞれ機能する。ただしあまりに複雑すぎて分かっていないことも多い。全ての詳細な解明はこれから。
アルツハイマー病を引き起こすアミロイドβ(安部田)の親玉であるだけに脳に存在してそうだが、なんと体中の細胞に存在している。
それもそのはず、神経の成長や修復に欠かせない重要な役割を担っているのだから、神経のあるところにはどこにでもいらっしゃるのであろう。つまり全身に。
埋まっているご様子
しかも以下のように細胞膜に埋め込まれている。↓
細胞膜に埋まっている様子はこちらの動画でも確認できる。
1:00から開始するように設定してあるけど、見れなかったら手動で1:00から見てね。細胞膜に埋まっている様子は8秒間ほどだよ。
ジキルとハイド
「安部田の元(APP)」のことがなんとなーく分かったところで、本題。
何がジキルでなにがハイドなのか?
ハイドな「安部田の元」
通常は神経の成長と修復に欠かせない役割を果たしている。
私たちの体を機能させるのに無くてはならない重要なポジションにいる「安部他の元」。
ジキルな「安部田の元」
中年以降になって老化が進むと、「安部田の元」から切り出された「安部田」が神経細胞を破壊することがあり、それがアルツハイマー病(Alzheimer's disease)を引き起こす。
先回まとめたように、α斬りの場合は「安部田」の途中が斬られるから、「安部田」は生まれない。ゆえにアルツハイマー病に対する防御的なパターンだと考えられている。これは「安部田の元」のハイド面である。
一方、β斬りが起こると「安部田」が生まれる。「安部田」が集まって塊りになったものが脳に溜まると神経細胞を破壊し、アルツハイマー病につながる。ゆえに通常の防御体制が破綻した状態と考えられている。これが「安部田の元」のジキル面である。
剣客βによるβ斬りから「安部田」が誕生し、集まって塊りになって蓄積してゆく様子を以下の動画で見てみよう。2:05から開始するように設定してあるけど、見れなかったら手動で2:05から見てね。その様子は約50秒間ほどだよ。
まとめ
「安部田の元」はジキルとハイドの両面を持っている。
「安部田の元」が剣客よって斬られ分離し、姿や役割を変えていくのは、私たちの体の生理機構を機能させるために必要で大事なプロセス。
こういったプロセスは、細胞膜に存在する他のタンパク質でも普遍的にみられる大事な機能。
だが、ひとたび正常なパターンが破綻すると、疾患へとつながってゆく。「安部田の元」はアルツハイマー病へとつながる危険な側面をはらんでいる。
これが「安部田の元(APP)」のジキルとハイドな面だ!
ちなみに「安部田の元(APP)」は全身に存在するから、「安部田」も全身で生まれている。それが血流に乗って脳に辿り着き、蓄積してアルツハイマー病を引き起こすこともあることが分かっている。↓
*1:079: アミロイドβ前駆体タンパク質 (Amyloid-beta Precursor Protein) - 今月の分子 - PDBj
*2:アミロイドβ前駆体タンパク質の細胞外ドメイン(上から、PDB:1mwp、PDB:1owt、PDB:1rw6)と細胞貫通ペプチド(PDB:1iyt)© Protein Data Bank Japan (PDBj) licensed under CC-BY-4.0 International
*3:「アミロイドβ前駆体タンパク質の細胞外ドメイン(上から、PDB:1mwp、PDB:1owt、PDB:1rw6)と細胞貫通ペプチド(PDB:1iyt)© Protein Data Bank Japan (PDBj) licensed under CC-BY-4.0 International」に説明を加えました。
*4:By Unknown, published by the National Printing & Engraving Company, Chicago Modifications by Papa Lima Whiskey [Public domain, CC BY-SA 3.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0) or GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html)], via Wikimedia Commons