【グリホサート20】~残留基準値の改正(4)~厳しくなったもの
前回は規制がゆるくなったものを見た。
基準値が厳しくなったもの
今回は厳しくなったものを見てみよう。
※以下の図は、厚生労働省[平成29年12月25日生食発1225第4号]食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件についてより抜粋したものに加筆したもの。
○:平成29年12月25日適用(規制緩和の品目)
●:平成30年6月25日適用(規制強化の品目)
※残留基準値の欄に記載のない食品及び表中にない食品については、一律基準
(0.01ppm)が適用される。
※赤線・・・特別な意味はないが1/6(6分の1)以上厳しくなったものにラインをひいた。
※大豆、とうもろこし、なたねと畜産物はグリホサートとN-アセチルグリホサートの和で判定する。それ以外の農産物はグリホサートのみで判定する。
基準値が改正された食品は他にもあるし、より正確な情報を得るためには、厚生労働省[平成29年12月25日生食発1225第4号]食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件についてをご覧ください。
0.05ppmってどれくらい?
具体的な量に換算してみよう。
例えば豚の筋肉。
改正前:0.1ppmなので1kgあたり0.1mgまでOK。
改正後:0.05ppmなので1kgあたり0.05mgまでOK。
豚肉の場合、筋肉も脂肪も改正後は両方0.05ppmだから、豚肉は0.05ppmってまとめて考えていいだろう。豚肉を100g買ったら0.005mg以下の含有量ってことになる。
ppmとは、量の単位ではなく、濃度や割合を示す単位で、100万分の1を表しています。
1 ppmの農薬が検出されたということは、1 kgの農産物中に 1 mgの農薬が含まれているということを意味しています。
東京都食品安全FAQより
ちなみに0.005mg(5μgマイクログラム)を計ろうと思うと、こんな精密機器が必要。(1g=1000mg=1000,000μg)
所感
緩くなったもの、厳しくなったもの両方をざっと見てみた。
残留しやすいものに関してはちゃんと規制しているように感じた。
それゆにえに緩和されたものとの違いがよく分からない。
0.01ppmというほぼ不使用レベルの食品もある一方で、30ppmや40ppmという基準値もある。
加工食品の原料になるものは高めで、あまり加工せずにそのまま食べるものは低めな気もする。
どちらも健康に害のないレベルに設定されているのだ。この差は何なのかな?
おそらく一日摂取許容量(ADI)との兼ね合いかと。
↓ ↓ ↓
残留基準の設定の仕方
残留農薬の基準の設定に当たっては、物質ごとに、毎日一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量 (ADI:一日摂取許容量)を食品安全委員会が設定した上で、これを基に農薬等として使用される物質の推定される摂取量がこのADIを超えないよう、食品 ごとの基準を設定しています。
一日摂取許容量(ADI)
ADI : Acceptable Daily Intakeの略。
ADIは、一生涯、毎日食べても健康に悪影響がないとされる量。
単位はmg/kg/day。
体重1kgあたり、○mgまでなら毎日食べても問題ないよって値。
各国のグリホサートのADI値
(mg/kg/day)
・日本 1(2016年)
・JMPR(合同残留農薬専門家会議)1(2004 年)
・EFSA(欧州食品安全機関) 0.5 (2015 年)
・USEPA(アメリカ合衆国環境保護庁)1.75(2002 年)
日本のADI値は1 mg/kg/day。
一日あたりどれくらい摂取していたかな?
毎日の食事の中に平均的に含まれているグリホサートは
2010年 32.11(μg/人/日)
2011年 28.59(μg/人/日)
ADIの0.07~0.08%ぐらいだったんだね。まぁ、改正前のデータだけど。
その後は基準値を超えるグリホサートは検出されていないため、データがない。
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農薬が正しい使用方法に基づいて使われているならば、残留基準地を越えることはない。基準値が緩くなったとしても、ADIを超えないように設定しているから一日の平均的な食事内容であれば、今後も一応安心してよいはず。
だけど、グリホサート自体が安全で申し分のない農薬ということではない。
病気との関連性が示唆されているのも事実。
今のところ、私たち消費者ができるのは、
・正しく理解するように努める。
・より自然や命に優しい農業システムに関心を持つ。
・残留農薬を影響を減らす調理方法を心がける。
・農薬の動向を監視して安全性を求める声をあげていく。
などではないだろうか?