医神アスクレピオス
アンドルー・ワイル医師は「癒す心、治る力」という本の中で、
「治療(トリートメント)」と「治癒(ヒーリング)」の関係を、
古代ギリシャの「医神アスクレピオス」と「健康神ヒュギエイア」に
なぞらえて説明している。
現代医療を、アスクレピオス派とヒュギエイア派という視点から
捉えている点もなるほどおもしろいなぁと思った。
が、如何せんアスクレピオスとヒュギエイアのことをよく知らないために
ストンと落ちてこない部分がある。とりあえず調べてみるとしよう。
神になった名医アスクレピオス
アスクレピオスを日本やアメリカのウィキペディアで調べてみると
こんな画像が載っている。
By Nina Aldin Thune - The Norwegian (bokmål) Wikipedia, Bilde:Asklepios.3.jpg, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=762534
杖に巻き付いたヘビがアスクレピオスのシンボル。
By original file by Michael F. Mehnert - File:Asklepios - Statue Epidauros Museum 2008-09-11.jpg, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8718607
モザイク画のアスクレピオスはなんだかちょっとかわいく見える。
By Original author and uploader was Alehanro (Ivan Ivanov) at bg.wikipedia - Transferred from bg.wikipedia, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5367491
医神でもあるアポロンの血筋
アスクレピオスの両親は、アポロン(父)とコローニス(母)とされるが、
アスクレピオスがまだ母のお腹の中いた時、事件は起こる。
コローニスが他の男と密通しているという知らせを聞いたアポロンは
「お前浮気しただろー!!」と激怒してコローニスを殺してしまったのだ。
(その知らせはどうやら誤報だったらしいが(; ̄Д ̄))
その時の絵がこれ↓
アポロンに射殺されたコローニス By ドメニキーノ - [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5296698
人間界でこういう事件はありますけど、
神様もこうなっちゃうんですかね(;・∀・)
激情にかられてコローニスを殺してしまったアポロンだが、すぐに後悔したらしく、
妻コローニスのお腹の中にいた我が子アスクレピオスを助け出し
ケイローンに養育をお願いしたそうな。(ケイローンは、ケンタウルス族の賢者)
By sconosciuto. Il prototipo era probabilmente un gruppo scultoreo esposto a Roma nei Saepta. - Unknown, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=5709453
ケイローンは、優れた教師だったようで
(注:上記の絵に描かれている生徒はアスクレピオスではない)
アスクレピオスは特に医学方面での才能があり、
やがて師ケイローンを凌ぐほどの名医に成長した。
命を操るまでになったアスクレピオス
さて、名医に成長したアスクレピオスだが
師ケイローンからの独立後も熱心に腕を磨いていって
ついには死者まで生き返らせることができるようになった。
(・`д´・;)ス、スゲー・・・。
しかし、これが大問題に発展する!
自分のところの死者が勝手に連れ戻されて
冥界の王ハーデースが激おこぷんぷん丸。
「死者を勝手に連れ戻してんじゃないよ!
世界の秩序が崩れるだろーがぁ!ヽ(#`Д´)ノ」
ハーデース By 遠藤 昂志 - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=47148957
まぁ、この気持ちは分かる気がする。
冥界の王ハーデースは、神々の王ゼウスに強く抗議。
事態を重く見たゼウスは、これを聞き入れ
全宇宙を破壊できるほど強力な武器、雷霆(らいてい)で
アスクレピオスをバーンって撃ち殺してしまった。
By DocWoelle - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=202608
そんな武器使う必要あります?(llФwФ`)ガクガクブルブル
雷霆(らいてい)を持ったゼウス↓
By Marie-Lan Nguyen - 投稿者自身による作品, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=913510
どうでもいいけど、この形…雷霆って、
ヴァジュラ(金剛杵)という法具と似てる感じ。
By S Pakhrin from DC, USA - Patan Kathmandu Nepal 2012, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=33969755
ヴァジュラも雷を操る道具らしい。
これは煩悩を滅ぼしてくれるというから、ゼウスの雷も、
人を救うだけでなく命を操るまでになってしまったアスクレピオスの煩悩を
打ち払った比喩ともみれるかな?
クローン技術など生命の倫理が問われる現代医学であるが
古代も同じような問題があったのかもしれないな。
星座になったアスクレピオス
死者を蘇らせるというのは少々やりすぎてしまったようだが
しかし、病から人を救った医師としての功績を認められて
魂は天に引き上げられ、神様の仲間入りをした。
へびつかい座として知られる。
By Till Credner - Own work, http://www.AlltheSky.com, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9295308
西洋と東洋の違いがユニークでおもしろい。
By Sidney Hall - This image is available from the United States Library of Congress's Prints and Photographs division under the digital ID cph.3g10061.This tag does not indicate the copyright status of the attached work. A normal copyright tag is still required. See Commons:Licensing for more information. Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=31738706
By Abd al-Rahman al-Sufi - Library of Congress, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12736841
うーん、へび使い座、どうーも医者って感じがしないけど、
古代の医者はこうなのかな?
医学の守護神アスクレピオス
古代ギリシャでは、病院をアスクラピアと呼んだらしい。
またアスクレピオスを祀った神殿はアスクレペイオンといい、
病の治癒を祈願する多くの巡礼者が訪れたようだ。
コス島のアスクレペイオン
CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=81874
医学の祖とされるヒポクラテスはここで医学を学んだらしい。
「ヒポクラテスの誓い」は今もなお西洋医学教育で語り継がれている。
私も医学を学び始めた頃、ヒポクラテスの木の下で輪になり
この誓いを立てるというステキな授業があった。なつかしい。
なんだかんだ現代医学もその源をたどれば、
アスクレピオスと繋がっているんだな。
アテネのアスクレペイオン
By DerHexer - 投稿者自身による作品, GFDL, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3913066
ペルガモンのアスクレペイオン
By Klaus-Peter Simon - 投稿者自身による作品, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12803609
こうして下調べしてみると、少しずつアスクレピオスを身近に感じられてきた。
「へび使い」と聞くとあまり「医者」というイメージはわかないけど、
へびにも何か意味があるんだろうな。
よし!今度はヒュギエイアについて調べてみよう。